事例紹介

今回は、リフォーム会社の展示場を美容室『Avenir』としてリフォームした施工事例をご紹介します。美容室として使いやすい動線や設備への変更をはじめ、空間に合わせた造作や素材選び、照明の調整など、デザイン性と使いやすさの両方を考えた工夫について、株式会社カルタス本郷の青島社長にお話を伺いました。



インタビュアー:
今日はよろしくお願いします。まず外観から印象的ですね。オレンジの壁に「Avenir」のサインが映えていて、通りから見ても目を引きます。中に入ると、外観の明るさとはまた違って、落ち着いた雰囲気がある印象を受けました。こちらは、元々どのような場所だったんですか?

株式会社カルタス本郷 代表取締役社長 青島:
元々はリフォーム会社の展示場でした。なので、最初から建物としてはしっかりしていましたし、中の間取りも大きく壊して変えたわけではありません。ただ、美容室として使いやすい空間にするために、壁の位置を少しずらしたり、既存の設備を作り替えたりしています。

展示場から美容室への用途変更だったんですね。大きく変えた部分はありますか?

一番大きかったのは、元々あったカウンターです。幅が60センチくらいあって、かなり存在感がありました。展示場として使う分には良かったんですが、美容室にするには動線の邪魔になりますし、高さも用途に合わなかったんです。なので、そのカウンターは一度全部壊して、今の美容室に合う形に作り替えました。

単純に内装をきれいにするだけではなく、「美容室として使いやすいか」を考えて調整されているんですね。

そうですね。見た目だけ整えても、実際に使いづらければ意味がありません。お客様が動きやすいか、スタッフさんが作業しやすいか、必要なものがちょうどいい場所にあるか。そういう部分を見ながら、現場で調整していきました。



店内で特に目を引いたのが、真鍮の棚です。空間のアクセントになっていて、とても素敵ですね。

ありがとうございます。これも既製品を買うと、10万円以上するんですよ。もちろん既製品には既製品の良さがありますが、予算もありますし、サイズがぴったり合うとは限りません。だったら、真鍮の丸パイプを買ってきて、自分たちで作った方がいいなと。

真鍮の棚を自作されたんですか!?かなり難しそうです。

大変でしたよ。特に、パイプの中にタップを切ってネジ山を作る作業が手間でした。真鍮は見た目がきれいなので仕上がるといい雰囲気になるんですが、加工には手間がかかります。でも、自分たちで作ることで、この場所にぴったりのサイズにできますし、コストも抑えられます。材料費だけなら7万円くらいで済みました。

ただ安くするというより、空間に合わせて作るための工夫なんですね。

そうです。安く済ませるだけなら、もっと簡単な方法もあると思います。でも、美容室の雰囲気に合っていて、長く使えて、しかも予算内に収まるものを作る。そこが僕らの仕事だと思っています。



こうしたリフォームや用途変更の案件は、カルタスさんとしては珍しい方なんですか?

最近は多くはありませんでしたね。以前は公共工事などに携わったこともありますが、店舗や事務所のような事業用空間のリフォームは、久しぶりの案件でした。ただ、今回のように既存の建物を活かしながら、美容室や店舗、事務所として使いやすい空間に整えていく仕事には、住宅とはまた違った面白さがあります。お客様の事業内容や使い方に合わせて、動線や見せ方、使いやすさを考えながら形にしていく。そういった店舗・事務所リフォームのご相談にも、今後は積極的に対応していきたいと思っています。

小さなメンテナンスにも対応されているとお聞きしました。

はい、対応しています。例えば、サッシまわりの不具合や、ちょっとした修繕のご相談をいただくこともあります。大きな工事だけでなく、暮らしの中で困った時に声をかけていただけるのは、やっぱりありがたいことですね。

小さなことでも相談できる存在なんですね。

そうですね。私たちは、工事が終わったら終わりではなく、その後も何かあった時に頼っていただける関係性を大切にしています。そうした日々の積み重ねが、今回のように空間全体に関わるご相談にもつながっていくのだと思います。

空間全体に関わるお仕事には、また違ったやりがいがありそうですね。カ:ありますね。お客様の要望を聞きながら、どう形にしていくかを一緒に考えていく。完成した時に「良くなったね」と言っていただけると、やっぱり嬉しいですし、この仕事の楽しさを感じます。「あと3センチ」に応える。でも、強度は譲らないイ:現場では、オーナーさんから急な要望が出ることもありますか?

しょっちゅうありますよ(笑)。この棚も、最初は高さ700mmで決めていたんですが、途中で「あと4センチ上げて」「やっぱりあと3センチ……」という話になりました。

そういう細かい調整にも対応されるんですか?

できる範囲ではもちろん対応します。実際に空間ができてくると、図面上では分からなかった感覚が出てきますから。「もう少し上の方が使いやすい」「見た目のバランスを変えたい」という要望が出るのは自然なことです。

ただ、どこまでも対応できるわけではないですよね。

そうですね。あまり上げすぎると、壁の中の下地から外れてしまうんです。そうなると強度が落ちて、棚として安全に使えなくなります。だから、そこは「これ以上は無理ですよ」とはっきり伝えます。お客様の希望はできるだけ叶えたいですが、壊れるものを作るわけにはいきません。そこはプロとして譲れない部分です。



この幅木も珍しい色ですね。空間の雰囲気に合っていて、さりげなく効いている感じがします。

これはアルミの幅木を使っています。もともとは別の素材で考えていたのですが、現場の雰囲気や全体の仕上がりを見ながら、「こちらの方が空間に合うのではないか」と考えてご提案しました。

現場で空間全体を見ながら調整されたんですね。

そうですね。もちろん、最初の計画を大切にしながら進めますが、実際に現場で見えてくることもあります。その時に、こちらだけで判断するのではなく、お客様にも確認しながら、より良い仕上がりになる方法を一緒に考えていきます。

ただ作るだけではなく、その場でより良い選択肢を提案されているんですね。

はい。図面通りに進めることも大事ですが、現場の状況や空間のバランスを見ながら、必要に応じて柔軟に対応することも大切だと思っています。最終的にお客様に「これで良かった」と感じていただけるように、細かな部分まで相談しながら仕上げています。

照明も調整されたんですよね。

最初はデザイン重視の照明だったので、少し暗かったんです。でも美容室は、髪の色や仕上がりを確認する場所でもあるので、明るさは大事です。そこで住宅用の照明を4つ追加しました。コストを抑えつつ、必要な明るさを確保する形にしています。

「既製品が高いなら作る」「空間に合う素材を考える」「暗ければ照明を足す」
その発想は、ただ図面通りに進めるのではなく、目の前の空間を見ながら、より良い仕上がりを追求していく姿勢そのものだと感じました。
今回の美容室「Avenir」の空間には、オーナーのこだわりを尊重しながらも、美容室としてきちんと機能するように整えられた工夫が随所に見られます。
見た目の美しさだけではなく、使いやすさ、強度、コスト、そして将来の使い勝手まで考えられていることが印象的でした。また、大きな工事だけでなく、日々の小さな困りごとにも向き合い、工事後も頼ってもらえる関係性を大切にしている点も、カルタスさんらしさのひとつです。
カタログから選んだものを並べるだけでは生まれない、その場所に合わせた空間づくり。カルタスさんの仕事には、現場の知恵と、ものづくりへの誠実な姿勢が詰まっていました。